今日のプログラムは、教会でのゴスペル体験とミッション地区の壁画ツアーでした。
サンフランシスコ市で30年以上も、性別・人種・年齢を問わず、貧困、人種差別、麻薬、エイズなどに苦しむ人々に、プログラムやサービスを提供してきた団体です。
毎週日曜日にあるの「サンデー・セレブレーション」では、さまざまな人種・年齢の人たちによって構成された合唱隊のゴスペルを聞き、これには観光客が参加することもできます。
着いた時には空いていた席も、すぐにいっぱいになり、通路には椅子も用意されていました。
合唱隊が登場して歌い始めると、参加者も立ち上がり、一緒に歌いだします。
手拍子をしたり、隣の席や前後の方とハグをしたり、手をつないだりと、地元の方も観光客も一体となり、思いっきり歌って踊って楽しみます。
言葉がわからなくても、わからないなりに楽しく参加できる。それは、教会の姿勢の一つとしての「開かれた場所」を表してるように感じました。
ただ、その華やかな場所のすぐ隣で、大勢の社会的弱者が暮らしているということを忘れてはいけないのだと思います。
教会を後にし、午後はミッション地区に移動。
ここはラテン系のコミュニティが多く存在する場所で、実に約7割がラテン系の人々だそうです。
そして、そのラテン系の壁画アーティストが多く住み、500を超える壁画アートを見ることができる場所として有名です。
私たちは、現地で行われているツアーに参加する形となります。
この日のガイドは、マークさん。
「ほんの一部だけど」と言いつつ、約50もの壁画を案内してくれました。
ここにある壁画は、コミュニティを反映した、政治的メッセージを強く表したものが多いですが、特にテーマが決まっているわけではなく、アーティストの裁量に任せられているそうです。
ビルのオーナーがアーティストにきちんと依頼して描いてもらったものや、逆にアーティストが頼み込んで描いたものなど、様々です。
単なる「落書き」ではなく、これを描くことにより、スプレーなどによる汚い落書きも防げるそうです。
実際、絵の下に何も書いていない部分があるところには、落書きがたくさんありました。
また、夜間閉まっているシャッターに絵を描くことで、犯罪の防止にもなっているそうです。
今年は壁画が描かれ始めてから35周年にあたるとのこと。
壁画が描かれ始めた当初は、人種差別や戦争といった大きなテーマが多かったようですが、やがて女性たちの手により、家族の絆や「大切なもの」、日常生活まで幅広く描かれるようになりました。
現在、若いアーティストが描く壁画には、政治的なメッセージは薄れてきているそうです。
しかし、壁画に文字をアートとして描いていくという伝統はもともとメキシコの方にあったらしく、そういった文化や、モチーフに歴史的なものを選ぶなど、現在は自分のルーツを表現する場に変わっていっているようです。
壁画もゴスペルも、時代の変化がしっかり現れていました。
思いの丈をぶつける場として、どちらも、生活と密着し、「生きている」からこそなのだと感じました。
そして、だからこそ、圧倒されるようなパワーを感じることができるのではないでしょうか。