凍てつく空。刺すような冷気。
暗闇の中でたたずむ一匹のヤモリ。
あれ!どうしてこの時期に?
「死んでいるのかな。」
触ってみると僅かに動く。だけど、やっと動ける程度。
さて、どうしよう。
放っておくのが筋。
だけど、動けないし朝方の冷え込みに耐えられないだろう。
散々迷った挙句、救出。
つかむと「きゅーきゅー」鳴く。
あ!ヤモリって鳴くんだ。
手の中に入れておくと、逃げようと抵抗し、パクリと指先を噛まれた。
あ!ヤモリって噛むんだ。
ヤモリに噛まれると腕が腐る、という言い伝えもあるようだが、実際は痛くも痒くもない。
救出したものの、さて、どうしたもんだか。
暖かい部屋の中に入れてしまえば、完全に冬眠から目覚めてしまう。
しかし、真冬にヤモリが食べる昆虫はいない。飢えて死ぬだけ。
かと言って、外に出しておけば、朝までに凍死確実。
四面楚歌。
またも迷った挙句、天井裏に放り込む。
ここなら凍死するほど寒くないし、冬眠から目覚めてしまうほど暖かくもない。
それにしてもどうしてヤモリは冬眠から目覚めてしまったのだろうか?
昨日はそんなに暖かな日でもなかったのに...。
何かよっぽどのアクシデントがヤモリの身に起こったに違いない。
ヤモリは漢字で書くと「家守」「守宮」。
普段は家を守ってくれている。
ならば、困っているときは守ってやってもバチは当たらない。