新宿ガード下の交差点。
普段は東京の空など見ないのだが、長い信号待ちで、思わず見上げた空があまりにも青い。
ふと、智恵子抄の一文が頭をよぎる。
「智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
(略)
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に毎日出ている青い空が智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。」
智恵子が見た遠くの空。
安達太良の空は、どうなってしまっているのだろうか。
青くなだらかな安達太良山。広い空。サファリパークの動物たち。塩沢や岳の旅館には人が入っているのだろうか。地域の人々の暮らし向きはどうなっているのだろうか。
徳永英明の歌が思い浮かぶ。「遠ざかる故郷の空、帰れない人並みに、本当の幸せ教えてよ、壊れかけのラジオ」
新宿ガード下の交差点から安達太良の空を想う。
青い空と白いビルが目にしみる。