8月というのに、やたらと寒いヨセミテの夜。(8/24の報告はコチラ)
充分に眠れないまま、2日目の朝がやってきた。
今日はコーディネーターの西村氏の知人であるベス・プラット氏の案内で、Mt.デイナまでのハイキングに行くことになった。
ベスは、ヨセミテアソシエイト(現:ヨセミテコンサーバンシー)の元副代表をされていた方である。
ヨセミテ国立公園ではレンジャーとしてではなく、NPOの立場で活躍されていた。
個人的には、ハイキングと自然解説よりも彼女自身がこれまでされてきた事をたっぷり聞きたかったが、ひとまずは彼女のガイドを受けながらタイミングを見てお話を伺うこととした。
ハイウェイからすぐわきに入ると、こんな景色が飛びこんでくる。
湿原になっているように見えるが、乾燥しているヨセミテでは普段はこんなに水が豊富ではないとのこと。今年は雪解けが遅く「連年通りでない」状態なのだそうだ。
道も、踏み跡も殆んど無い。私たち以外に歩く人と殆んど見当たらない。そんな場所。
ベスが、所々で丁寧に説明をしてくれた。
写真の花は、まるでトウモロコシの様だが、ユリの仲間なのだそうだ。
目に飛びこむ景色は、荒涼としていて果てしなく広く、奥行きがある。
上に登るにつれて、雪が見え始めた。
標高3000m近くになると、ガレ場が広がってきた。
また、地形がすり鉢状に見えてくる。これは、氷河の浸食によってできた地形のためである。ヨセミテバレー自体がそうなのだが、もともとは雪があり、それが溶け、浸食によってできた地形だと言われている。
雪の浸食の他に、風と水による浸食の跡も見られた。
山の中腹で一休み。うしろは絶壁、脇には雪。背景の山々には植物が殆んど見えない。
ヨセミテの自然は、優しさより厳しさが際立っている様に思えた。
いたるところで「ピィー、ピィー」という、シギの様な鳴き声が聞こえる。
ベスは「パイカ」と言っていた。ナキウサギのことである。
岩の上で、周囲を見回している姿をようやく見つけることができた。
ゲーラ・ピークとカシドラル・ピークの間をひたすら進み、お勧めの絶景ポイントに到着。
ベスは半袖短パンだが、標高は3000m程度で風も吹きすさび、実は長袖でも結構寒い。
ベスの指の先にあるのはモノレイク。塩分濃度が海水の4倍あるそうだ。
独自の生態系がある。渡り鳥たちの休憩地にもなるそうだ。(モノレイクは後日足を運んだので、この場所についての報告は後ほど)
風景を堪能した後は、食事をとりながらの団らんの時間。
他のメンバーに通訳をお願いしつつ、ベスとコミュニケーションをとってみた。
彼女が所属していたヨセミテアソシエイト(現、ヨセミテコンサンバンシー)と、レンジャーが所属するNPS(ナショナルパークサービス)の2者がどのようなパートナーシップをとっていたかについて聞いてみた。
ヨセミテコンサーバンシーは2010年にヨセミテアソシエイトと、ヨセミテファウンドが合併してできた組織であるが、ヨセミテアソシエイトは環境教育プログラムの実施、レンジャーへの教育、ボランティア活動などの「ソフト面」でのサポート、一方でヨセミテファウンドは老朽化看板の更新など修繕など「ハード面」でのサポートを行っていた。また、寄付を募るなどの活動はコンサーバンシーのスタッフが行っていたとのことである。
つまり、寄付活動など国立公園でレンジャーが業務で担えない部分などをNPOであるコンサンバンシーが補完しているのである。必要だが足りない物を賄うのに、その方法としてNPOがあるのである。寄付以外にも書籍の販売やエコツアー、ボランティアコーディネートなども担っている。実際、ビジターセンターに行くとレンジャーの他にコンサンバンシーのスタッフがいる。
日本の多くの公園のように行政が管理者を選定し、管理者がその業務の範囲内で何かをするという、そういう考え方では無い。まず資金があって、それを担う人を決めるのではなくて、具体的にやらねばならない事がまずあって、それを行うために必要な方法をとるのである。その方法が例えばNPOとのパートナーシップなのである。日本もヨセミテと同じく「国立公園」があるがスタートから違う。当然、資金の使い方、集め方、業務の取り組み方や姿勢も変わってくるわけである。面白いと感じたのは、レンジャーの教育も行っているとベスの口から話されたことだった。NPSのレンジャーは何かしら自身の専門は持っているはずだが、新人教育的な事は行っている様である。コンサンバンシーとNPSはwinwinの関係で、どちらかが上という関係ではないのである。
ゆっくりと話したかったのでが、ヨセミテバレーの方で煙が立っているのが見えた。帰り道の方向で山火事が起こっている様である。規模次第では道路が通行止めで帰れなくなってしまうため、帰りを少し急ぐこととなった。
2日目にして、非常に貴重な出会いがあった。観光ツアーでは絶対持つ事ができない出会いである。今回のコーディネータの西村氏との出会いも貴重であるが、貴重な出会いが、また貴重な出会いを作って行く事を実感した。
なお、ベスは現在NATIONAL WILDLIFE FEDERATIONという組織に所属されており、「水」や「森林」といった生きをとりまく周囲の環境をテーマにした環境保全活動をされているようである。