春の季語です。
竹はこの時期、紅葉します。
親竹は、筍を伸ばすために一年間蓄えてきた養分を使い切り、葉が色褪せてしまうのです。竹が紅葉するこの時期を、日本人は紅葉に視点の軸を置き、竹の秋と表現しました。
雑木林の木々が萌木色の新芽をだし、生命の息吹がもっとも勢いのあるこの時期に、竹はひっそりと秋を迎えます。
春なのに、秋なのです。
風もないのに一枚一枚落ちる竹の葉。
小刻みにくるくる回りながら横滑りしてきます。
その姿は、春の宴が終わったことを告げるシグナルのようです。
夕方や吹くともなしに竹の秋 永井荷風