高度成長花盛りの頃。
東名高速道路や新幹線が整備され、遠い地方の名物が家庭に入り込んできた。
京都土産のおたべ。九州の辛子明太子。そして仙台の笹かまぼこ。
近所のお兄さんが仙台の大学に行っており、帰省するたびに笹かまぼこを買ってきてくれた。
当時、カマボコと言えば、半月型で、色は、白またはピンク。木の板にくっついている食べ物で、うどんの具材か刺身のように食べるのが定番だった。
ところが、仙台土産の笹かまは、板にはついておらず、葉っぱのような形で、一枚一枚に焦げ目のような色がついていた。
確か、当時の笹かまは、今のように一枚一枚包装されておらず、薄い箱に鱗のように並べられていたと思う。
さて、このカマボコ。
どうやって食べるか?
家族の誰もわからない。
斜めに包丁を入れて、お刺身にようにしてみたり、焼いてみたり。
まわりが乾いているので手づかみできるのが利点と言えば、利点。
関東人にはどうもしっくりこない食べ物だった。
あれから数十年。
笹かまぼこもすっかり洗練されてしまった。
小さくおしゃれな形で、「カマンベールチーズ入り笹かま」から「チョコ笹かま」まで。
その笹かまが3月11日から生産できなくなっていた。
被災しなかった工場もあったそうだが、材料も燃料も流通も壊れてしなったので、生産が中断してしまった。
このゴールデンウィークを利用して石巻にボランティアに行ってきた知人が帰京した。
土産は「笹かまぼこ」だった。
包装を空けていると涙が出た。
「おまえ無事だったのか」
そんな気分である。
たかがカマボコ。されどカマボコ。
笹かまに復興の明るい兆しを見た。