日曜日は狭山公園でのガイドウォーク。担当のMレンジャーは「野鳥の行動にフォーカスしたバードウォッチング」というテーマで計画を立てていました。まず出迎えてくれたのは芝生広場のツグミ。そこへシジョウカラも降りてきました。桜の木ではかわいいコゲラが飛び回り、圧巻は多摩湖堤防から見たカンムリカイツブリの群れ!
参加者のほとんどが、「大満足」とアンケートに書いてくれた。
しかしMレンジャーは悩んでいました。
*写真はコゲラ
なぜ「野鳥の行動」にフォーカスしたのか?
それで何を伝えられるのか?
それが明確に言えなかったのです。
アンケート結果はよかった85点のガイドウォーク。でも反省会でそこをきっちり検証する。
ここが我々のインタープリテーションと、そうでないものの分かれ目です。
ここから先は科学の教科書には出てこない。精神的な領域にも、勇気を持って踏み込まなくてはいけない。
虚心になって今日見た鳥たちのことを振り返ってみる。
コゲラはとてもかわいいけれど、スコープの中の一瞬の表情は、「森のおじいちゃん」、「森の哲学者」のようにも見える。
カンムリカイツブリの群れは、素晴らしいパレード、いや最新漁船団のチームワーク操業...
*カンムリカイツブリの群れ
そう!
私たちは野鳥の行動を、人間の行動に移し変えて見ることができるのです。
だからワクワクする。
ハラハラもする。
自分のことのようにも思え、応援したくなったりもする。
そこから学びとったり、悟ったりすることができる。
生きるために獲物を捕ること。
喧嘩の仕方。
喧嘩の終わらせ方。
真剣な恋。
親の愛情。
雛のかわいらしさ。
死!
今、一番身近な動物といえばペットでしょう。
犬や猫からも、私たちはいろいろなことを学ぶことができる。
でもやっぱり野鳥のように真剣な縄張り争いや、恋のための勝負や、狩りなんかもできない。
バードウォッチングから我々が得られるものは、とても多いはずです。
本当はタヌキやモグラのことも知りたいけど、(おっぱいあげてるタヌキなんて、すご~く見たい!)彼らの生活を観察するのは、そうそう簡単にはできません。でもバードウォッチングは誰でもできる。野鳥はいろんなことを見せてくれる。(いざとばれば飛んで逃げられるから)
われわれは、「生きる」とはどういうことか、簡単には答えられないようになってしまった。
それを野鳥はズバッと見せてくれる。
それがバードウォッチングの素晴らしさなのです。
野鳥の行動を見ることで、我々が現代社会で見失ったものに気づくこともできる。
大げさにいえば生きる勇気とか、未来への希望なんかも。
それが「行動」を見てもらいたいと感じた、Mレンジャーの、言葉にできなかったメッセージです。
事前にここまで詰めてあれば、Mレンジャーも、もっと自信を持って、心に残るメッセージを発せたでしょう。
野鳥たちを、野生の命を「かけがえのない隣人」と感じる、少なくともその導きにはなったでしょう。
雰囲気作りが上手いとか、ユーモアがあるとか、インタープリターの技術には、いろいろなものがあるかもしれない。
でもやっぱり僕は、かちっとしたメッセージがあってほしいと思うのです。
そしてNPObirthのレンジャーならば、われわれのミッションのとおり、「未来へつながるような、人と自然の関係」を、示唆してもらいたいのです。