今日は、狭山公園のガイドウォーク。森の中で、担当の丹レンジャーは、トラツグミの話を始めました。
つぶらな瞳のトラツグミ(上の写真)は、バードウォッチャーたちには人気の野鳥。
ちょっとドン臭くて、よくオオタカにやられるし、フェンスにはさまって動けなくなったりもする。静かにしてるとかなり近くまで寄れる。
丹レンジャーのトラツグミに対する気持ちが伝わってくる話でした。
と、そのとき双眼鏡を持った参加者から声が上がりました。
「あそこにトラツグミが!」
見ると川の反対側で、ぴょこぴょこ歩き回る姿を発見!みんな大喜び。
しっかり観察した後、丹レンジャーはバックから、さっとトラツグミの羽を取り出し、その美しさにもびっくり!
さて
この嬉しいハプニングは偶然なのでしょうか?
最近、birthの中では、イベントの準備の中での、「シュミレーション」の重要さが話し合われていました。
本番と同じ気持ちで現場を何度も歩く。そしてなるべく直前にも現場へ出て、本番と同じことを1から10までやってみる。
台本を棒読みするのがガイドウォークでも、インタープリテーションでもないのです。
そこで一番目につくものを見落とさない。何が出るか確認するだけでなく、出そうなもの、出そうな質問まで想定する。
どんなお客だったら、どんな目で見るか、どんな質問が来るか、そういうあらゆる場面を想定し、準備し、詰め将棋を詰めておくのがシュミレーションなのです。将棋には相手があるんだから、勝負の半分はその出方で決まってくる。そこのシュミレーションが大事です。台本がない台本作りと言ってもいいかもしれない。
丹レンジャーのしっかりしたシュミレーションが偶然を呼び込んだ。
それがインタープリテーションの魔法で、魔法のないインタープリテーションほど退屈なものはないのです。
午前中、僕は小中学生を連れて、野山北・六道山公園を歩いた。
今の小中学生にどんな問題(空虚と僕たちは呼びます)があるのか、自然を通して、その空虚を埋められないか?
そんなことを僕はいつも考えているのです。
縄張りに入ってきたジョウビタキを、ツグミが追い払いました。
ジョウビタキも気が強いけど、体の大きさが違うので、勝負はすぐについてしまう。
ここで僕は昔、家で飼っていたチャボの話をしました。立派な雄のチャボでしたが、ある日、父がもっと大きな白色レグホンをゲージに入れた。白色レグホンはチャボが死ぬまで頭をつつき続けるのです。
なぜツグミはすぐにジョウビタキを許したのに、白色レグホンは死ぬまでやるのでしょうか?
ゲージに閉じ込められていたからです。いつまでも自分の縄張りから出ていかない(出ていけない)から、死ぬまでやるのです。
それは白色レグホンが悪いのでなく、閉じ込めた人間が悪い。どちらかを出してやらなくてはいけない。
無数にある田んぼのタネツケバナで、100株に1つが花を付けていました。
たくさんの中では「変わり者」
でもそんな「変わり者」がいるのが自然なのです。そしてそれはとても大切なこと。春に2ヶ月雨が降らない異常気象が、20年に一度来るかもしれない。その時こそ、その100分の1が、冬に種を付けていることが生きるのです。
本当は「変わり者」は「変わり者」ではなく、ちゃんと役割を持っているんです。いつか必ずみんなのためになれるのです。
人間の世界にも、芸術家とか、冒険家とか、そういう「変わり者」がたくさんいる。でもみんな大切な人たちで、そういう人たちが人間の世界を幸せにし、大きく広げてもきたのです。いやもう何百万年も、100と1とでタッグを組んでいたからこそ、人類は生き残ってきたのです。
僕は中学生の男の子にいいました。
「だからね、学校で一人だけみんなと違う子がいても、いじめたりしちゃいけないよ。その子の顔がみんなと違っても、みんなと違う遊びをしていても、それはとても大切なことだから。」
「もし君が、自分がみんなと違うと思っても、心配することはないよ。100分の1と、100分の99は、お互いにとても大切なんだ。99の人をバカにしちゃいけないよ。」
あとでその子のお母さんから電話がありました。
その子は中学でいじめにあって、公立中学をやめて私立へ転校したばかりだったというのです。
「息子はとても嬉しそうでした。あんなに夢中で人の話を聞くのを初めてみました。僕たちは閉じ込められていたから、どちらか出てもよかったんだね。と言っていました。」
さて、これは偶然でしょうか?
その子の前で、偶然ツグミはジョウビタキを追い出したのでしょうか?
僕は偶然、そんな話をしたのでしょうか?
ツグミどうしのけんか