時間には二つの概念があるという。
一つはクロノス。
もう一つはカイロス。
クロノスは、過去から未来へと流れる機械的な時間。時計で測ることができる時の流れ。
カイロスは、タイミングとかチャンスとか人間的な価値判断を伴う時間。直感とか偶然が支配する感覚的な時刻。
さて、タイトルの「百年目」。
大辞林では、次のように説明されている。
(1)ある年から数えて100年にあたる年。
(2)どうにもならない運命の時。運のつき。
用法:「ここで会ったが百年目」
ここまでが前振りで、ここからが本題です。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
写真の着物。
村山大島紬です。
この着物、「百年目」です。
何がどう百年目かと申しますと、
この着物、本州最西端、山口県の山村で百年間眠っていました。それを見つけ出し、村山に里帰りさせました。
所有者の話によれば、今から25年前に御年97歳で亡くなられた女性が1912年頃に仕立てたもの、との事でした。
1912年といえば、明治天皇が崩御され、時代は明治から大正に替わりました。海外ではタイタニック号が大西洋に沈んだ年です。
さて、話を戻します。
村山織物協同組合のHP(http://www10.ocn.ne.jp/~murayama/newpage2.htm)によれば、村山大島紬が世に出たのは1920年代とあります。
すると、写真の着物は、それより8年若いことになります。
という事は、この着物は、村山大島紬ではない、という事なのか?
考えられるのは、
1)この着物が作られたのは1912年ではない。
2)この着物は1912年に作られているが、生地が村山大島紬ではない。
3)1912年に村山産の紬で作られた着物だが、当時はまだ村山大島紬という商標がなかった。
元の所有者に詳細を問いましたが、なにぶん古い話なのでこれ以上の事はわからないと言います。
こうなりゃ自分で調べるしかありません。
幸い村山には「村山大島紬」の歴史を記録展示している村山織物協同組合もあるし、また、地元の長老たちに話を聞けば糸口がつかめるような気がします。
着物の柄や織り方を頼りに探っていきたいと思います。
さて、もう一つ説明しておきます。
この着物を入手した理由です。
この着物の購入価格は高いものではありませんでした。
一般的には明治時代に仕立てられた古着です。市場価値などありません。
しかし、もし、百年物の村山大島紬なら、生産地の村山にとっては歴史的価値があると考えました。
これが購入動機です。
ところが、この着物が本当に百年物の村山大島紬だという確固たる証拠はありませんでした。
さて、どうする!?
入手するか、見送るか?!
そもそも村山大島紬は、庶民の普段着。市場価値のない古い村山大島紬が市場に出回ることは滅多にない。
たぶん、これが最初で最後のチャンスになるはず。
「ここで会ったが百年目」
百年目に賭けて入手を決断しました。
どんなもんでしょうか?
詳しい人がいたら鑑定お願いします。