ザルに乗っているこの白っぽいもの。
さて、なんだか分かりますか。
栗の実?!
「惜しい!」
そうです。
橡の実(トチノミ)です。
トチノミは、日本人にとって大切な食材です。
縄文時代から食べられ、近世以降もコメの収穫が少ない山村では重要な食料として扱われてきました。
ところが、最近はほとんど食べられていません。
その最も大きな理由は、食べるのに手間がかかるからです。
栗は、そのまま茹でれば食べられます。
しかし、トチはアクが強く、食べられるようにするには大変な手間がかかります。
水にさらして、灰でアク抜きをして、乾かしてetc。
そんな手間暇をかけて出来たのが写真のトチノミです。
狭山公園のボランティアさんが作りました。
あまりに美味しそうなので一つ食べてみると...。
食感は、サラサラ・コリコリ。栗のようなのですが、口の中には苦いものが残ります。
この苦みが不思議な苦みで、ただ苦いわけではなく、アワアワしている感じです。
「アワアワして苦い」とでも表現しましょうか。
ここで話は横っ跳びをします。
この「アワアワして苦い」で思い出しました。
落語の演目「茶の湯」の一シーンです。
何も知らずに茶の湯を始めたご隠居さんと丁稚さんが「青黄粉」と「ムクロジの実」を使ってお茶を立てるという話です。
この茶の味が「アワアワして苦い味」で、トチノミのような味なのでは?と想像しています。
さて、話を戻します。
このトチノミ。
これからまだアクを抜くそうです。
ただ、あまり抜き過ぎてしまうとトチらしさが無くなるそうで、ちょっとアクを残しながらアクを抜くそうです。
この繊細な感覚が日本ポイですよね。
微妙にビターテイストを残す。
素晴らしい!
そしてそのトチをコメと一緒について、トチモチにするそうです。
ちなみに、トチモチをつくための臼は、これからケヤキの丸太をくり抜いて作るそうです。
さらに、杵は、月の中でウサギが使っているタイプの杵を作りたいそうで、これから杵に丁度良い木を物色するそうです。
はてさて、気の長い話です。
その行く末を楽しみに見守りたいと思います。