昔々のこと、名家に奉公にあがったお菊という娘。
ある日、主人の大切にしている10枚ひとそろいの皿のうち一枚を割ってしまう。
娘はその責任を問われて責め殺され、井戸に投げ込まれてしまう。
その後、夜になると娘の亡霊が現れ、皿を数える。
「一枚、二枚、三枚~」。
そして、娘の祟りによってお家にいろいろな災いが起こり、衰亡してゆく、という怪談話。
この可哀想なお菊さんの名がつけられた昆虫が、前にも紹介したジャコウアゲハの幼虫又はサナギ。「お菊虫」と名づけられている。
どうしてお菊虫などという名をつけられてしまったのか?
一説によれば、サナギの外見が、女性が後ろ手に縛り上げられた姿を連想させることや、幼虫の姿がとても気味悪い事から名付けられたと伝えられている。
さて、里山民家裏トレリスのウマノスズクサにくっついているジャコウアゲハの幼虫。
そう言われると、女性が後ろ手に縛り上げられた姿にも見えてくるから恐ろしい。
夜半、真っ暗になったトレリスの前を歩いていると、背筋が凍る思いがする。
お菊虫がどこからかこっちを見つめているんじゃないか?
そんなある日の晩のこと。
トレリスの前を通過しようとすると、女の悲しげな声が聞こえてくる。
「一匹、二匹、三匹~」
「ぎゃー出た!」
と思ったのだが、なんか変。
「一枚、二枚~」ではなく、「一匹、二匹~」
「ん!?」
女性スタッフが、ジャコウアゲハの幼虫をカウントしているだけでした。
お粗末