今日の狭山丘陵は、真っ青な青空のもと、さわやかな風が木立をゆらす夏の避暑地のような気候でした。空には、けたたましく鳴きながらホトトギスが飛び、雑木林の中では木漏れ日がゆらめいていました。
今、日当りの良い場所では、ウツギが咲きはじめました。
白い小さな花が、たわわに咲き乱れています。
ウツギは漢字で書くと、「空木」と書きます。これは、木の中が空洞になっているからです。
ウツギと名の付く木の仲間は多く、例えば、「ウツギ」「ノリウツギ」「ツクバネウツギ」「コゴメウツギ」などがあります。
しかし、これらのウツギは、植物の分類から見ると同じ仲間ではありません。「ノリウツギ」は、ユキノシタ科、「ツクバネウツギ」は、スイカズラ科、「コゴメウツギ」は、バラ科です。ウツギと名が付いているからと言って、ウツギと同じ種類の植物だと思っていると、ぜんぜん違う種類の植物であったりすることもあるのです。
さて、本家本元の「ウツギ」に話を戻します。ウツギは、万葉集の時代、「卯の花」と呼ばれていました。万葉集の中には、卯の花を詠み込んだ歌は多く、24首もあります。その中の多くが、ホトトギスとセットで詠まれています。
例えば、
「霍公鳥、来鳴き響もす、卯の花の、共にや来しと、問はましものを」
(霍公鳥が来て鳴いています。卯の花と一緒にやってきたのかと、聞くことができたらいいのに。)
まさに、今日の狭山丘陵の状況を詠んだような歌です。
が、この歌が詠まれたのは、1300年前の奈良時代。
「つまり、私は今、1300年の時を超えて万葉人と心を通わせているのか!」
そう思うと、とても厳かで雄大な気持ちになりました。
そして、今、目の前に広がる自然を、人と自然の関わり合いの文化を継承すれば、1300年後の誰かと共感し合えるかも知れない。
「遠い未来の見知らぬ誰かのために自然都文化を守る。」
ちょっと大げさかな?
でも、楽しいな。