金色に輝く麦畑の向こうに、深みどりの屋敷森が見える。
武蔵野台地の初夏を代表する風景です。
もともと武蔵野台地は、水利に乏しく、江戸時代までは人が住まない広大なすすき野だったと言われています。
万葉集では、「武蔵野は月の入るべき山もなし草よりいでて草にこそ入れ」と詠まれています。
この不毛の台地に人が住めるようになったのは、江戸時代になってからです。
玉川上水や野火止め用水の完成により、やっと生活が出来るようになったのです。
と言っても、常に水が豊富だったわけではなく、水田耕作が出来たのは、山から水がわき出る一部の地域に限られていました。
そこで栽培されたのが麦。
麦はもともと乾燥地帯の植物。
武蔵野台地でも栽培できました。
今は畑自体が少なくなってしまいましたが、かっては、どこに行っても麦畑が広がっていました。
晩春から梅雨が始まる間のこの時期、青空の下で金色に輝く麦畑。
畑のはるか彼方には、屋敷森がそびえ、平地林が広がっていました。
麦畑からはヒバリが飛び立ち、天高く、どこまでも、どこまでも登っていく姿を見ていると、気持ちがスッキリしたものです。
この風景があって武蔵野台地。
残しておきたい風景です。