ここ数日、夏を思わせるような天候が続いています。
ついこの間まで春だったのに、季節の移り変わりに着いていくのがやっとです。
カタクリなど、早春を彩った植物たちはすっかり姿を消し、アジサイの花芽が大きく膨らんでいます。
ヤマツツジ、ミズキなどの花もいつの間には終わり、代かきを待つ田んぼでは、シュレーゲルアオガエルの鳴き声が響いています。
この時期、山の中を歩いてると、白い花弁がたくさん落ちている光景に出くわします。
花びらの正体は、エゴです。エゴは、春と梅雨の間に咲く、白い花で、こずえに沢山の花を咲かせます。
さて、この「エゴ」という名前。
エゴイストのエゴではなく、実が渋い(えぐい)から来ているそうです。実の皮がサポニン成分を含んでいるためかなり渋いのです。
今はエゴが一般的な呼び名ですが、古来は「ちしゃ、ちさ」と呼ばれていたそうです。
万葉集にはこんな歌が詠まれています。
「息の緒に 思へる我れを山ぢさの 花にか君がうつろひぬらむ」
【私はあなたのことを、命のかぎり想っているのに、あなたは、ちさの花がすぐにしぼんで色が変わってしまうように、心変わりしてしまわれたのでしょうか。】
この歌を読むと、昔も今も、人の心は移ろいやすく、同時に、人が人を思う心は昔も今も変わらない事を実感します。
変と不変を繰り返しながら、自然は巡り、人も巡る。
エゴの花が、季節の移ろいを教えてくれるかのように足を止めてくれました。