子供の頃、お墓参りに行った後には、必ず和菓子屋でおはぎを買い求めました。
「白い粉をふいたような小倉色。
小判型の整った形。
口の中に入れた時の、サラッとした餡の食感が今でも忘れられません。」
ところが、中学生のある日、「おはぎ」の概念を覆す大事件に出くわしてしまいました。
事の起こりは、昼食時間に、となりのクラスのA君が、弁当におはぎを持ってきた事からはじまります。
「Aが弁当におはぎを持ってきたらしい。」
暇な中学生にとって、Aの所業は、格好の餌食でした。
たちまち噂は学年中に広まり、Aは話題の人になりました。
さっそくとなりのクラスに行き、事の真相を確かめました。
Aの弁当箱の中には、黒光りしたつぶつぶのアンコがついた丸い物体が入っており、Aはそれをお箸で食べていました。
友人B:「なに、それ?」
友人A:「ぼたもち」
友人B:「それ、おはぎじゃん」
友人A:「ぼたもち」
友人B: 「なんで弁当にお菓子なんか持ってくるんだ?」
友人A:「ぼたもちだから」
話は全くかみ合いません。
衝撃の出来事でした。
まず、弁当にお菓子を持ってきたという事。
次に、おはぎを箸で食べている事。
さらに、「ぼたもち」という重たそうな名前。
これがあの「棚からぼたもち」の「ぼたもち」というものなのか!
あれから幾星霜。
いまだに、「おはぎ」と「ぼたもち」の区別は曖昧であり、毎年、この時期になると、軽く悩んだりします。
「おはぎ」なのか、「ぼたもち」なのか。
春の彼岸の頃に食べるのが、「ぼたもち」、秋の彼岸の頃に食べるのを「おはぎ」との説もあります。しかし、これも時代や地域によってバラバラ。
里山民家のある岸では、「いのこのぼたもち」なる食べ物もある。
この問題に決着をつけようと思うと、日本の食文化ばかりでなく、仏教文化にまで入り込む必要がありそうなので、今回はお終い。
続きは、秋のお彼岸の時に。
see you