今から20年前の夏の日。
わたしは、取り返しのつかない一言を、発してしまいました。
あの一言がなければ・・・。
暑い夏の日の午後のことでした。
エアコンを効かせた居間で寝転んでいると、家の外で子供の歓声が聞こえてきました。
「なんだろう?」
外に出てみると、小さな男の子が2人。
おそろいの捕虫網と虫かご持ち、何かを捕まえたと大はしゃぎです。
「何捕まえたの?」
わたしの問いに、待ってました、と言わんばかりに、2人は、虫かごをわたしの顔の前に突き出しました。
「えっ!何がいるの?」
虫かごには虫らしきものは入っていません。
子供たちはわたしの態度にいらだったように、「これだよ、これ」と虫かごを揺すりました。
すると、虫かごの底を小さな黒い玉がコロコロと転がるのが見えました。
「な~んだ、ダンゴ虫か。こんなのしか捕れなかったの~。」
「僕が小さい頃はね。この虫かご一杯になるほど、セミを捕ったよ」
子供たちはわたしの顔を上目づかいで見ると、そのまま何処かへ走り去ってしまいました。
「ひとり、道路上に取り残されてしまったわたし...。」
「なに!?。なんて無愛想なガキだ。」
釈然としない気持ちのままで、部屋に戻り、いろいろと考えを巡らしました。
「あれ!そうか、もうこの辺りには、セミがいないんだ。」
「あんなにたくさんいたセミは何処へ行ってしまったんだろう...。」
「そうか!家の前にあった森がなくなったからセミは消えてしまったんだ。」
「そうだよな。大人が全部、木を切っちゃったからな。まったく、大人たちはロクな事をしないなぁ~」
と、そこまで思った瞬間、ハッとしました。
「俺も大人じゃねえか!!」・・・。
「という事は、セミがいなくなったのは、自分の責任でもあるわけで・・・。あの子たちから見れば、セミをいなくしてしまった犯人でもあるわけで...。で、あの一言を言っちゃったわけで...。」
とっても痛い出来事でした。
「身近な自然をとり戻そう」、固く心に誓った出来事でした。
あれから20年。
あの子たちは、二十代半ばの青年になっているはずです。
彼らは、あの夏の日の、あの心ない一言を覚えているだろうか。
まだ、道半ば、「まちに地みどり」もっともっと頑張らないと!