NPO birth

2024.6.18
自然環境マネジメント

奥多摩に新しく建設されるホテルの敷地にビオトープを創出!

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JR青梅線古里駅より15分ほど歩いたところにSatologue(サトローグ)という場所ができました。奥多摩の自然や文化を楽しむことができる、おしゃれなホテル&レストランです(2024年5月現在はレストランのみ完成)。

奥多摩の里山の風景を目指して

この場所に、NPO birthがプロデュースを行ってビオトープをつくりました。
カエルやイモリなど地域在来の生物が集う場になることを目指しています。

製作期間:2024年2月~3月
場所:東京都西多摩郡奥多摩町棚沢1

沿線まるごとホテルとは

沿線まるごと株式会社によって発足したプロジェクトで、JR青梅線沿線全体をホテルに見立てて地域活性化しようというものです。2024年5月現在、その第一歩としてSatologueにレストランが完成しました(2024年6月現在はレストランとサウナのみ営業)。

沿線まるごとホテルとは、無人駅の駅舎や沿線集落の空き家をホテルの客室等に改修し、そのホテルを地域住民とともに運営することで、沿線をまるごと楽しめるホテルのようなサービスを作り出すことを目指したプロジェクトです。

林業と里山

Satologueの敷地横の川辺にはかつて、周辺で伐採された木材が集められる「土場」があり、林業によって栄えた人里と暮らしがありました。(写真提供 Satologue)

奥多摩というと「山奥」というようなイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実際には、人の暮らしが自然に作用して出来上がる「里山」というほうがふさわしい場所です。

風変わりな立地を活かして

Satologueのレストランは、古い民家をリノベーションして作られています。
その目の前に、水辺のビオトープをつくりました。

ここには、魚の養殖をしていた巨大なコンクリートの生簀がいくつも連なっています。今回はあえてこのコンクリートを撤去することはしませんでした。

かつてのここでの人々の暮らしをお客様に感じてもらう狙いがあります。これは、外構をプロデュースする株式会社空庭(カラニワ)の彌永さんが打ち出した方針です。これを受けて、生簀の中に土を入れ、その上にビオトープや畑をつくることになりました。

地元の土にこだわる

巨大な生簀を土で満たすためには、大量の土が必要でした。当初は工事現場で出た残土などを運び込む検討もされましたが、そうなると産地不明の植物の種子、つまり大量の外来種が持ち込まれることになってしまいます。

それはなんとか避けたいと思案していましたが、このプロジェクトの主要メンバーである沿線まるごと株式会社の牧さんと、株式会社さとゆめの福井さんが奔走してくださり、地元の石材会社と交渉して、近隣の森からでた地元の土を入手することができました。

土木作業

これまでNPO birthが手掛けたビオトープの中では、Satologueのビオトープは最大級の規模です。職員だけでは手が足りないため、株式会社丸三興業に協力を依頼しました。穴掘り、突き固め、石運びなど、ビオトープの基礎部分となる大変な作業でしたが、2日で見事に完了しました。

特殊な防水シート

水辺を作るためには、土中に防水層を作る必要があります。
荒木田土のような粘土を使う選択肢もありますが、今回は外来種を持ち込まないことに重点を置き、あえて人工物の防水シートを採用しました。

多摩防水技研株式会社が提供しているこの防水シートは、極めて強靭で耐用年数が長いため、ビオトープでの使用にも適しています。

地面に隙間なく10cmほど重ねるようにして敷き詰め、接着剤で張り合わせていきました。この接着剤も特殊で、完全に硬化すればシートと一体になって水を漏らしません。

石・砂利の敷設

防水シートの上に石と砂利を敷き、自然な池底を作っていきます。エコトーンになる斜面部分は石が転がり落ちてしまうため、金網を敷くなどして固定しました。大小さまざまな石を使い、目の前を流れる多摩川の一部としても違和感のないように仕上げました。

植栽

ビオトープに入れる植物は、やはり地元のものにこだわりました。水中には、近隣の土地から分けていただいたセキショウを植えました。常緑なので冬でも景観を維持してくれますし、太い根が石の間に入り込めば、ビオトープの地盤を安定させてくれます。

陸地については、すぐ隣の生簀の中に生えた野草を使いました。植生を薄くシート状に剥ぎ取り、それをビオトープの周囲の地面にペタペタと、シールのように貼り付けています。在来の中低木についても可能な限り敷地内に生えていたものを活用しました。

呼び寄せたい生きもの

急斜面が多い奥多摩は、浅い湿地や水辺が自然ではできにくい立地です。そのため、Satologueのビオトープは、そうした場所を好む生きものに生息・産卵する場所を提供するという方針にしました。ターゲットになるのは、カエル類やイモリ、サンショウウオといった両生類。あるいはミズカマキリやゲンゴロウの仲間などの水生昆虫類。それらの生物が集まる場所を目指しています。今後、定期的に生物調査を行って確認していく予定です。(6月13日時点で、アカハライモリを確認しました!)

完成したビオトープ

担当者コメント

沿線丸ごとホテルというプロジェクトが面白く、また外構のコンセプトも素晴らしかったので、それに恥じないようにビオトープにもこだわりました。多くのご協力のおかげで良いものに仕上がったと思います。Satologueで食事やサウナを楽しんでいただくとともに、ビオトープもぜひ見ていただきたいです。
今回感じたことは、鉄道と生物多様性の相性の良さです。もし、JR線の各駅にビオトープを作ることができたら、鉄道に沿ってとても大きなビオトープ・ネットワークが出来上がることになり、これは生物多様性を大きく向上させる骨格になります。Satologueを起点として、今後もぜひ鉄道や沿線地域の活性化に関わらせていただけたらと思っています。

自然環境マネジメント部 部長 久保田潤一

ビオトープ メイキング動画も作成しました。ぜひご覧ください。

また、Satologue様にインタビューしていただきました。こちらぜひご一読ください。
■【インタビュー】ビオトープ監修 NPO birth 久保田潤一さん
https://satologue.com/article/951

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