ナラ枯れ病問題を考える。調査レポート第一弾!
■背景・目的
現在、都内各所でカシノナガキクイムシを起因とするナラ枯れ被害が急増している。ナラ枯れは、老齢の大径木ほど発生しやすく、半面、若齢木では発生しにくいと言われている。しかし、若齢木のナラ枯れ発生状況を調査した事例は少なく詳細はわかっていない。
そこで定期的に萌芽更新を行っている東京都内の雑木林においてナラ枯れ被害状況の調査を行った。
■調査地等
・調査地:都内某所
・調査日:令和3年10月27日、11月8日
・調査者:NPO birth山下洋平
・敷地面積:約2ha
・植生:落葉広葉樹二次林
・管理体制:自治体と市民団体が協働で管理
・管理方法:林内を20分割し、区画ごとに5~6年周期で伐採や苗木植栽など計画的な管理を行っている。
■調査方法
林内に生育する胸高直径5cm以上のコナラ、クヌギを対象とし、樹種、胸高直径、ナラ枯れ被害の有無、樹齢の調査を行った。目視により、被害の有無を確認し、被害状況に応じて以下のように区分した。
※フラスとは、カシノナガキクイムシが木の中に潜り込む際に出る木くず。
なお、調査木が株立ちの場合は、幹によって被害状況が異なるケースも見られたため、それぞれの幹を1個体としてカウントしている(ex:コナラ2本株立ち → コナラ2本とカウント)。
■調査結果/考察
林内には胸高直径5cm以上のコナラが176本、クヌギが143本生育していた。そのうちナラ枯れ被害木は、コナラ65本(率にして36.9%)、クヌギ18本(12.6%)であった。
当林内では、同じ胸高直径の場合、コナラの方がクヌギより被害を受けやすい傾向がつかめた。(下図参照)
次にコナラに絞って被害状況を考察する。林内に生育するコナラ176本のうち、無被害木は111本、被害木は65本であった。被害木の内、生存木は51本、枯死木は14本であった。
胸高直径30cm以上の樹齢50~80年のいわゆる大径木では被害木の割合は84.7%であり、大径木の多くが被害にあっていることがわかった。
一方、胸高直径30cm未満、樹齢15年未満の若齢木の被害割合は12.8%であった。
被害木の状況を見ると、若齢木は少なく、老木が多いという結果になった。
当林地では、カシナガ被害を防ぐためのラップ被覆や薬剤注入、枯死木伐採後の場外搬出などの対策が実施されている。
■今後に向けて
当調査によって伐採更新や苗木の補植によってコナラの若返りを図っている林地はナラ枯れ被害を受け難いことが明らかとなった。今後、コナラ林を維持していくためには定期的な更新伐採及び補植を行い、コナラ林を若返らせる必要がある。また、枯死木の処理には場外搬出やチップ化などの処理を行い、カシナガの個体数増加を抑制することが被害拡大に効果的だと考えられる。引き続き、雑木林の保全に努めていきたい。
NPO birth自然環境保全部 舟木匡志、山下洋平
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